ワカサギ釣りは冬のもの——そう思っている人がほとんどだと思います。実際、多くの湖では夏のワカサギは禁漁です。
ところが芦ノ湖は違います。芦ノ湖のワカサギ釣りのシーズンは、漁協公式の案内で「8月〜12月の禁漁まで」。むしろ冬は湖全体が禁漁で釣りができません。そして芦ノ湖には、エサをまったく付けずに釣る「空バリ(カラバリ)」という独特の釣り方があります。

この記事は、その夏の芦ノ湖のワカサギに絞って書きます。冬にドーム船で釣る富士五湖のワカサギとは、まるで別の釣りです。
芦ノ湖のワカサギは夏から。冬は釣れません
芦之湖漁業協同組合が公式に紹介しているワカサギの釣り方は「ボートによる餌釣り・カラバリ釣り」、シーズンは「8月〜12月禁漁まで」です。年によっては7月下旬から釣れ始めることもあり、漁協関係者が「日本一早くワカサギ釣りが解禁できる」と語っているほどです。
理由は水にあります。芦ノ湖はカルデラ湖で、ワカサギのエサになる動物性プランクトンが豊富。そのため成長が早く、夏の時点ですでに釣れるサイズになっているわけです。
逆に、冬は釣れません。芦ノ湖の釣り自体が例年3月上旬に解禁して12月中旬で終わり、そこから2月末までは禁漁期間だからです。
ここで注意してほしいことがあります。ネット上には「冬のワカサギは群れがまとまるから魚群探知機なしでも釣れる」といった説明が出回っていますが、これを芦ノ湖の話として読むと完全に間違いになります。他の湖の話が混ざったまま拡散しているのだと思います。芦ノ湖の冬は、そもそも竿を出せません。

なお芦ノ湖のワカサギは、大正7年に霞ヶ浦から移植されたものです。毎年10月1日の刺網漁解禁の初漁が箱根神社に奉納され、宮中に献上されてきたことから「公魚」の字が当てられるようになりました。かながわブランドにも登録されている、由緒のある魚です。
エサがいらない|空バリ・金バリ釣りの発祥地
芦ノ湖のワカサギ釣りの最大の特徴が、エサを付けずに針だけで釣れることです。針の輝きでワカサギを誘う、いわゆるフラッシング効果を使った釣りです。
他の湖では赤バリなども使われますが、芦ノ湖では金バリが圧倒的に強いとされています。もともとはエサが外れた金バリにばかり掛かることに気づいた釣り人がエサなしで釣り始めたのが起源で、これが製品化されて全国に広まったといわれています。長ザオに空バリ仕掛け、というスタイルは芦ノ湖発祥というわけです。

かつては「空バリが効くのは水温が高い時期だけ」と言われていました。ところが近年は、ワカサギが水深18m以深の深場に落ちてからも有効で、禁漁まで空バリで通せるという話になっています。夏に始めて秋まで同じ仕掛けで押し通せるのは、道具の面でもかなり楽です。
エサを刺す手間がないぶん手返しが速く、指も汚れません。お子さんと一緒でも扱いやすい釣り方だと思います。
夏ワカサギの特徴|型が良く、棚がバラバラ
夏のワカサギは、冬の個体に比べてひとまわり大きいのが特徴です。引きもしっかり感じられます。味も良く、天ぷらやフライにすると身がしっかりしています。

一方で難しいのは、群れのいる棚が定まらないことです。深場で釣れたかと思えば浅場に出てくる、を繰り返します。タイミングが合えば湖底から水面までワカサギで埋まることもあり、そうなれば一気に数が伸びます。
ただ群れの移動が速いので、魚群探知機があると効率がまるで違います。冬の富士五湖のように群れがまとまってくれる釣りではありません。ボートに魚探を積めるなら積んでいったほうがいいです。
天候も影響します。空バリは光で誘う釣りなので、理屈のうえでも晴天のほうが分があります。曇りや雨の日はアタリが遠のくことが多いので、行く日は天気予報を見て決めるのが賢明です。
ボートは借りるのが基本|自家用船は届出制です
芦ノ湖のワカサギはボートからの釣りが基本です。レンタルボートを借りるのがいちばん確実で、手漕ぎでもエンジン付きでも借りられます。
問題は自分の船を持ち込む場合です。ここは誤情報が多いので、はっきり書いておきます。
芦ノ湖では、動力船・ローボート・カヌー・手漕ぎ船など船種を問わず、すべての船について出航届の提出を求められています。芦ノ湖水上安全協会の制度で、事務は芦之湖漁業協同組合が代行しています。受付は芦ノ湖水産センターで、必要書類として船舶検査証書と船舶操縦免許が挙げられており、事務手数料もかかります。
「免許がいらないエレクトリックモーターを持参すればいい」という趣旨の案内をネットで見かけますが、これは届出の仕組みを飛ばした説明です。マイボートやカヤックで浮かびたい人は、必ず事前に漁協へ問い合わせてください。
| 出航時間 | 通年 8時30分から |
| 帰港時間 | 夏季(4月1日〜9月30日)17時/冬季(10月1日〜3月31日)16時 |
| 受付 | 芦ノ湖水産センター |
早朝の出航や、日没ぎりぎりの帰港は控えるよう案内が出ています。夏でも山上の湖なので、時間には余裕を持ってください。
守るべき遊漁規則
芦ノ湖は遊漁規則がかなり細かい湖です。ワカサギ狙いでも関係してくるものを挙げます。
- 釣りをする前に遊漁料を支払い、遊漁証を携帯する。他人への貸与・譲渡は不可
- 餌・疑似餌を用いた手釣り、竿釣り、曳縄釣り以外はできない。使用できる仕掛けは1人2本まで
- まき餌、ワーム(軟質プラスチック製疑似餌)、パワーベイト等の合成素材付け餌は使用禁止
- わかさぎ釣りを除き、胴突き仕掛けは使用できない(=ワカサギ釣りに限って胴突きが認められている)
- 釣りができるのは日の出1時間前から日没1時間後まで。夜釣りは禁止
- 国立公園内のため、場所取りは禁止
- 釣り船に乗るときは必ず救命胴衣を着用し、飲酒しての乗船はしない
春に来る予定がある人は追加で注意が必要です。3月1日から4月30日までの間で組合が定める期間は、湖全域で岸および桟橋からのエサ釣りができません。また3月1日から5月31日までは、岸からのエサ釣りで仕掛けを竿先より15m以上延ばすことが禁止され、一部区域ではエサ釣り自体ができません。ワカサギの採卵事業にともなう期間限定の禁漁区が設定されることもあります。
マス類やバスを一緒に狙う場合は、体長制限と持ち帰り尾数もあります。ヤマメ・イワナ・ヒメマス・ニジマス・ブラウントラウト・コイは18cm以下、オオクチバスは25cm以下が採捕禁止。持ち帰りはマス類が合計15尾、オオクチバスが5尾までです。オオクチバスを生きたまま芦ノ湖から持ち出すことは禁止されており、ブルーギルは神奈川県内水面漁場管理委員会指示によりリリースが禁止されています。
釣ったワカサギを泳がせる釣りは、事前に確認を
「釣ったワカサギをそのまま泳がせてトラウトやバスを狙う」という遊び方を紹介している情報を見かけます。魅力的に聞こえますが、ここは慎重になったほうがいい部分です。
芦ノ湖の遊漁規則には、餌・疑似餌を使った手釣り・竿釣り・曳縄釣りのみ可能で仕掛けは2本まで、という定めはあるものの、生きた魚をエサに使うことの可否は明記されていません。生き餌の扱いは湖ごとに考え方が違い、明確に禁じている漁場もあります。
規則に書かれていないことを「書いていないからOK」と判断するのは、監視員とのトラブルの元です。やってみたい人は、事前に芦之湖漁業協同組合に問い合わせて確認してください。ひと手間ですが、それが確実です。
実際、どれくらい釣れるのか

私の夏ワカサギの最高記録は、1日でおよそ230匹です。夏としてはよく釣れたほうだと思いますが、正直まだ伸ばせる手応えがありました。棚をもっと丁寧に探っていけば、500匹前後は見えてくるはずです。
群れさえ捉えられれば、冬より数が出ることもあります。逆に群れを外すと沈黙します。魚探で群れを探し、見つけたらその棚を撃ち続ける——夏の芦ノ湖はこの繰り返しです。
まとめ
芦ノ湖の夏ワカサギは、8月ごろから狙えて、エサがいらず、型も良い。これだけ条件が揃った釣りは他にそうありません。
押さえるべきは3つです。冬は禁漁だということ。ボートを持ち込むなら出航届が要ること。そして仕掛けは2本までで、ワカサギ以外に胴突きは使えないこと。
夏に箱根へ行く機会があれば、バスやトラウトだけでなく、季節外れのワカサギにも竿を出してみてください。ルールを守って、気持ちよく釣りましょう。
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