富士五湖に釣りに行ったのに、風が強くて船が出ない。雨で山中湖の岸がぬかるんで釣りにならない。——20年通っていれば、そういう日は必ずあります。そんなとき私が寄るのが、忍野村の「森の中の水族館。山梨県立富士湧水の里水族館」です。
ここは観光ついでの水族館というより、釣り人にとっては「答え合わせの場所」です。ヤマメやイワナが流れの中でどこに定位するのか、イトウのような大型魚が小魚をどう見ているのか。湖の上からは絶対に見えないものが、ガラス1枚越しに全部見えます。入館料も手頃で、駐車場は無料。釣りの合間に寄る場所として、これ以上のコスパはありません。

森の中の水族館とは
山梨県忍野村の「さかな公園」の中にある、淡水魚専門の県立水族館です。海のない山梨県に初めてできた水族館で、県内の河川や湖に生息する魚と、県内で養殖されている魚を中心に展示しています。
最大の特徴は、富士山の湧水を使っているために水の透明度が極端に高いことです。普通の水族館の水槽とは見え方がまるで違います。施設の規模自体は大きくありませんが、そのぶん一つひとつの水槽をじっくり見られます。
基本情報
- 所在地……山梨県南都留郡忍野村忍草3098(さかな公園内)
- 開館時間……7〜9月は9:00〜18:00、10〜6月は9:00〜17:00
- 休館日……火曜日(祝日の場合は翌日)ほか
- 入館料……大人と小中学生の2区分。未就学児は無料。小中学生は毎週土曜日が無料になります
- 駐車場……無料(普通車 約100台)
料金や開館時間は改定されることがあるため、お出かけ前に公式サイトの利用案内で最新の情報を確認してください。夏休み期間は混雑予想カレンダーも公開されています。
釣り人目線の見どころ
二重回遊水槽——魚が「流れに向く」理由が見える
館内中央の大きな水槽です。二重構造になっていて、内側に小型魚、外側に大型魚を入れることで、本来なら食べられてしまう組み合わせが一緒に泳いでいるように見えます。

釣り人として注目してほしいのは、魚がほぼ全員同じ方向を向いていることです。これは水槽内に流れを作ってあるため。川魚は流れに頭を向けて定位し、上流から流れてくるエサを待ちます。
渓流でルアーやエサを流すとき「上流から下流へ」が基本とされる理由が、ここを5分眺めるだけで腹に落ちます。魚が流れのどのあたりに、どんな間隔で並ぶのか。この距離感は、実際の川では濁りと反射でまず見えません。
チョウザメ=サメではない
入ってすぐの水槽にはコイやニジマスに混じってチョウザメがいます。キャビアで知られる魚ですが、名前に反してサメの仲間ではありません。古い系統の硬骨魚で、骨板に覆われた体つきは他の淡水魚とまるで違います。

この水槽の前には椅子が置いてあります。釣りで歩き回った後に座って眺められるのは、地味にありがたいポイントです。
企画展・小型水槽——中身が入れ替わる
世界各地の魚を展示する小型水槽がいくつも並んでいます。この水槽群は不定期で中身が入れ替わります。ペットショップでおなじみの魚から、アルビノ個体のような珍しいものまで、行くたびに違うものが見られます。

常設展に加えてテーマ別の企画展も開催されているので、「一度行ったからもういい」とならないのがこの水族館の強みです。
【要注意】クニマスを見たいなら西湖へ
この水族館を紹介する古い情報の中には、「生きたクニマスが見られるのはここだけ」と書かれているものがあります。これは現在の状況とは異なります。
クニマスは、かつて秋田県の田沢湖にのみ生息し、1940年代に絶滅したとされていた魚です。ところが2010年、山梨県の西湖で約70年ぶりに生息が確認されました。1935年に田沢湖から西湖へ移植された卵が、誰にも知られないまま繁殖し続けていたのです。
その生きたクニマスを展示しているのは、西湖の「-奇跡の魚-クニマス展示館」と、秋田県の田沢湖クニマス未来館です。クニマス展示館は山梨県が整備した施設で、西湖コウモリ穴の管理棟内にあり、入場は無料です。生体展示のほか、田沢湖での歴史や西湖で見つかった経緯がパネルで解説されています。
森の中の水族館の公式サイトの施設案内には、現在クニマスの水槽は掲載されていません。展示内容は入れ替わることがあるので、目当てがある場合は事前に問い合わせるのが確実です。クニマス展示館については山梨県のクニマス展示館の案内をご覧ください。
なお、クニマスは西湖が世界で唯一の生息地となっている極めて貴重な魚で、見た目がヒメマスとよく似ています。西湖で釣りをする際は、漁協のルール(ワームの使用禁止など)を必ず守り、判別に迷う個体が掛かった場合は魚を傷つけないように扱ってください。扱いに不安があれば漁協に確認するのが確実です。
子ども連れで行くときに知っておきたいこと
- 館内はコンパクトで、混雑時は通路が詰まりやすい。子どもから目を離さないように
- 一帯は「さかな公園」として整備されていて、遊歩道や遊具がある。水族館のあとに遊べる
- 毎週日曜のエサやり体験や、貝殻の工作体験などの無料イベントがある(先着制のものあり)
- 館内は飲食禁止。ストロボ撮影も魚が水槽にぶつかるため禁止
- ペットを連れての入園は不可
釣りと組み合わせる回り方
忍野村は山中湖のすぐ隣で、河口湖からも車で20分ほどです。朝に湖で竿を出して、風が上がってきた昼過ぎに水族館へ、という組み立てがしやすい立地にあります。
| 組み合わせ | ねらい |
| 山中湖のバス釣り+水族館 | 距離が最も近い。午前の陸っぱり後にそのまま |
| 河口湖のワカサギ+水族館 | 冬のドーム船を降りた午後の時間つぶしに |
| 西湖の釣り+クニマス展示館 | クニマスが目当てならこちら。展示館は無料 |
| 渓流釣り+水族館 | ヤマメ・イワナの定位を目で確認してから川へ |
特におすすめしたいのが最後の組み合わせです。渓流に入る前に二重回遊水槽で魚の位置取りを見ておくと、その日の川の見え方が確実に変わります。
まとめ|「釣れない日」の使い道として最良
森の中の水族館は、派手なショーがあるわけでも、規模が大きいわけでもありません。ですが富士の湧水による透明度と、県内の魚を中心にした展示は、釣り人にとって実用的な情報の宝庫です。
風で船が出ない日、雨で岸に立てない日。そういう日に「今日は釣りにならなかった」で終わらせず、狙っている魚の生態を目で確かめる時間に変えられる。それがこの水族館の、釣り人にとっての一番の価値だと思います。
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