沼津港で竿を出していると、ふと思うことがあります。自分がサビキを落としているこの足元の海は、沖へ進むとどこまで深くなっているのだろうと。
答えは2,500メートル。駿河湾は日本一深い湾です。そして沼津港には、その深海の生き物を専門に展示する「沼津港深海水族館 シーラカンス・ミュージアム」があります。釣り場から歩いていける距離にあり、当日チケットを見せると港八十三番地内の飲食店・土産店が10%割引になる。雨で釣りにならない日にも、釣った後の食事とセットにする日にも、これ以上噛み合う施設はありません。

沼津港深海水族館とはどんな施設か
水深200メートルより深い場所に棲む生き物をメインテーマにした、世界初の深海水族館として2011年に開館しました。目の前の駿河湾を中心に、常時100種類以上の深海生物を展示しています。
普通の水族館にも深海コーナーはありますが、たいていは一角だけです。ここは館内すべてが深海というのが決定的に違う点で、「駿河湾の下に何がいるのか」を丸ごと見せてくれます。
基本情報
- 所在地……静岡県沼津市千本港町83番地(港八十三番地内)
- アクセス……JR沼津駅南口からバスで約15分「沼津港」下車/東名沼津IC・新東名長泉沼津ICから約20〜30分
- 駐車場……専用駐車場はなく、港八十三番地駐車場など近隣の有料駐車場を利用
- 料金……大人・小中学生・幼児(4歳以上)の3区分。65歳以上と障害者手帳提示の割引、団体割引、年間パスポートあり
- 特典……当日チケットの提示で、港八十三番地内の飲食店・土産店が会計から10%割引
料金や営業時間は改定されることがあるため、お出かけ前に公式サイトのアクセス・料金ページで最新の情報を確認してください。駐車場の割引条件も公式に記載があります。
釣り人が見ておきたい展示
タカアシガニ——駿河湾で本当に獲れる世界最大のカニ
世界最大のカニです。足を広げると3メートル近くになる個体もいて、写真ではまず伝わらない迫力があります。

注目してほしいのは、これが遠い海の話ではないという点です。タカアシガニは駿河湾の名物で、戸田港などで水揚げされます。自分が釣りをしている湾の底に、この大きさの甲殻類が実際に歩いている。そう思って見ると、見え方がかなり変わります。
ダイオウグソクムシ——虫ではなく甲殻類
深海のダンゴムシとして有名になった生き物です。見た目から昆虫だと思われがちですが、実際はカニやエビと同じ甲殻類で、ダンゴムシやフナムシに近い等脚類の仲間です。

メキシコ湾の水深800メートル付近に棲むもので、数か月から1年以上絶食できることでも知られています。深海という餌の乏しい環境に、生き物がどう適応しているかがよく分かる展示です。
ラブカ・メガマウスザメ——めったに見られない深海ザメ
ウナギのような長い体に、ウツボのような頭。それでいてサメの仲間という、見た目からして異様な魚がラブカです。原始的な特徴を残す深海ザメで、生きた個体が捕獲されること自体がまれです。

体長5メートルを超えるメガマウスザメとあわせて展示されていますが、これらは生体ではなく、はく製や標本としての展示です。深海ザメを生きたまま飼育することは技術的にきわめて難しく、だからこそ実物大の姿を間近で見られる機会そのものが貴重だといえます。
シーラカンス——冷凍個体が見られるのは世界でここだけ
この水族館の名前にもなっている最大の目玉です。剥製3体と冷凍2体の合計5体が展示されていて、冷凍個体を見ることができるのは世界でもここだけとされています。

展示されている個体は、1981年に日本シーラカンス学術調査隊が現地と協力して捕獲したもので、正式に展示が認められた貴重なものです。
シーラカンスは、化石記録から白亜紀末に絶滅したと考えられていました。それが1938年、南アフリカ沖で生きた個体が見つかり、世界を驚かせます。その後1997年から98年にかけて、インドネシア近海でも別種のシーラカンスが確認されました。「生きた化石」と呼ばれるのはこの経緯によるものです。
ちなみに「姿が数億年変わっていない」とよく言われますが、現生種は化石種とは別の属で、体の作りにも違いがあります。変化が緩やかだった理由については研究が続いており、深海だから汚染を受けにくい、といった単純な説明ができるものではありません。
展示は入れ替わる——メンダコに会えるかは運次第
深海生物の展示には、他の水族館にはない事情があります。飼育がきわめて難しく、そもそも入手が漁の状況に左右されるという点です。
人気の高いメンダコがその代表で、深海底引き網漁の禁漁期には入手できないため、常時展示ではありません。公式サイトでは、展示していない期間や再開の見込みがそのつど告知されています。
お目当ての生き物がある場合は、公式サイトのお知らせを出発前に確認しておくと確実です。逆に言えば、行くたびに顔ぶれが変わるということでもあります。

沼津港での釣りと組み合わせる
この水族館の一番の使いどころは、沼津港での釣りとセットにすることです。
| 場面 | 組み合わせ方 |
| 朝マヅメに釣った後 | 午前中に片付けて、昼は水族館+港八十三番地で海鮮 |
| 風・雨で釣りにならない日 | 室内施設なので天候に左右されない |
| 子ども連れの釣行 | 子どもが飽きたときの逃げ場として機能する |
| 釣った魚を調べたい | 駿河湾の魚が何を食べ、どこに棲むのかが展示で分かる |
当日チケットで飲食店が10%割引になるので、先に水族館、あとで食事という順番が得です。沼津港はグルメも強いエリアなので、この組み合わせは家族の同行者にも喜ばれます。
まとめ|自分が釣っている海の「下」を見に行く
沼津港深海水族館は、観光施設としてももちろん面白いのですが、釣り人にとっては「自分が竿を出している海の続き」を見せてくれる場所です。タカアシガニもラブカも、遠い外国の海の生き物ではなく、駿河湾という同じ海の住人です。
沼津港で釣りをする予定があるなら、ぜひ一度セットで組み込んでみてください。釣れなかった日でも、「今日は深海を見てきた」で帰れます。
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