海釣りを始めてまず迷うのが、「どのエサを買えばいいのか」ではないでしょうか。釣具屋の冷蔵ケースには虫エサ・エビ・オキアミ・切り身がずらりと並び、初心者ほど選びきれません。
結論から言うと、迷ったらまず「アオイソメ(青イソメ)」を1パック。これ一つでキス・ハゼ・カサゴ・メバル・カレイまで、堤防で釣れる魚のほとんどをカバーできます。そのうえで、狙う魚や「虫が苦手」といった事情に合わせて選び分けるのがいちばん失敗しません。
私は山梨で生まれ育ち、釣り歴は20年以上。富士五湖のバスから静岡の沿岸、河川まで竿を出してきました。海のエサ釣りも一通り試してきた経験から、初心者がまず押さえるべきエサを種類ごとに整理します。
なお、ネット上には「エサは現地で採ればタダ」「テトラでカニを一網打尽にできる」といった情報も残っています。ですが後半で説明するとおり、多くの生き物の採取は漁業のルールで制限されていて、テトラでの行動は命に関わります。今の安全・法令の常識に合わせて読み進めてください。
海釣りエサの主役|虫エサ(アオイソメ・石ゴカイ・本虫)
集魚力でいえば、生きて動く虫エサが今も海釣りの主役です。何を買うか迷ったら、まずはこのグループから選べば間違いありません。

アオイソメ(青イソメ・青虫)|迷ったらこれ
もっとも安価で入手しやすい万能エサです。キス・ハゼ・メバル・カサゴ・カレイなど、堤防で釣れる魚を幅広くカバーします。サイズがやや大きめなので、対象魚に合わせてハサミで切って使うのがコツ。小物狙いなら短く、良型狙いなら長めに垂らします。
虫が苦手な方は、専用のエサつかみ(トング)を使えば直接触らずに扱えます。頭側は軽く噛むことがあるので、ハリを刺すときは口元の扱いに注意しましょう。
基本は釣行直前に釣具店で買うのが新鮮で安く確実ですが、近くに釣具店がない場合やまとめて用意したいときは通販でも入手できます。輸送中に弱ってしまうことがあるため、選ぶなら「死着保証あり」の商品が安心です。
石ゴカイ(ジャリメ・砂ゴカイ・赤イソメ)|小物釣りの食い込み重視
アオイソメより細く柔らかい虫エサで、魚の食い込みが抜群です。キスやハゼなど口の小さい小物狙いに向きます。地域によっては「赤イソメ」と呼ばれ、店によってはアオイソメや本虫を赤イソメと呼ぶこともあるので、購入時は太さ・大きさを確認すると安心です。
本虫(マムシ・イワイソメ・岩虫)|勝負どころの高級エサ
名前は物騒ですが、ヘビのマムシとはまったく別の虫エサです。太くて匂いが強く、カレイ・アイナメ・チヌ(クロダイ)・マダイに実績のある高級エサ。匂いが強いぶん餌取りにも取られやすいので、ここぞという勝負どころで使うのがおすすめです。小さな釣具店では扱いがないこともあるため、品揃えのよいチェーン店で入手すると確実です。
【虫が苦手な人へ】パワーイソメ|常温保存できる人工虫エサ
生きた虫がどうしても苦手なら、人工の虫エサ「パワーイソメ」という選択肢があります。生きていないので手が汚れにくく、パッケージのまま常温で保存でき、使い残しも取っておけるのが大きな利点。マルキユー独自の味・匂い成分を配合していて、ただのワームより食いを誘いやすいのが特長です。青イソメ色ならアオイソメの代わりとして、キス・ハゼ・カサゴなど幅広い魚に使えます。生きエサには一歩譲る場面もありますが、「虫が苦手」「エサを長持ちさせたい」初心者の心強い味方です。
虫が苦手でも扱いやすい|オキアミ(ウキ釣り・サビキの大定番)
虫エサと並ぶもう一つの定番がオキアミです。生タイプとボイル(加熱)タイプがあり、ハリに刺す刺しエサにも、撒いて魚を寄せる撒きエサにも使えます。メジナ・チヌ・マダイ・アジなど、動くものしか食べない一部の魚を除いてほとんどの魚が口にする万能エサ。冷凍ブロックで売られていることが多く、虫が苦手な人でも比較的扱いやすいのが利点です。
甲殻類(カニ・エビ)|チヌ・スズキ狙いの実力派
カニやエビは、特定の魚を狙うときに力を発揮するエサです。

- カニ(イワガニ・イソガニ):チヌ(クロダイ)のカニ釣りで人気。
- カメジャコ(スナモグリ):チヌ・キビレの刺しエサ。弱りやすいので保管はていねいに。
- シラサエビ・モエビ:生きたまま撒く「エビ撒き釣り」でスズキ・チヌ・メバルに効果的。
【重要】エサは「買う」のが基本|現地採取には法律の壁がある
カニやエビ、貝を「現地で採ればタダ」と考えたくなりますが、これは大きな落とし穴です。日本の沿岸はほとんどの海域に共同漁業権が設定されていて、その対象となっている生き物(貝類・多毛類など)を無断で採ると漁業権侵害として罰則の対象になり得ます。
また、釣り人(遊漁者)が使ってよい漁具・漁法は各都道府県の漁業調整規則で「さお釣り・手釣り・たも網・素手での採捕」などに限定されていて、カニ網やカゴでカニを採ることを禁止している県が多いのが実情です。「タモで一網打尽」といったやり方は、資源保護の面でも法令の面でもおすすめできません。エサは釣具店で買うのが基本と考え、どうしても採取したい場合は必ず地元の漁協や自治体のルールを事前に確認してください。
【安全】テトラ(消波ブロック)は釣り場で最も危険な場所
カニ採りやカサゴの穴釣りでテトラに乗りたくなる場面がありますが、消波ブロックは波を消すための構造物で、人が歩く前提では作られていません。表面は濡れると氷のように滑り、いったん隙間に落ちると自力では這い上がれず「死の隙間」と呼ばれるほど危険です。
海上保安庁の資料でも、釣り中の海中転落による死者・行方不明は毎年100人前後にのぼり、消波ブロック周辺はその大きな要因の一つとされています。テトラに無理に立ち入らない、ライフジャケットを着用する、単独行動を避ける、そして海の事故は「118番」——この基本を必ず守ってください。
切り身(サンマ・サバ・イカ)|虫が苦手な人の味方

サンマ・サバの切り身
匂いが強く集魚力があり、虫エサが苦手な方にうってつけです。生きエサに比べると食いはやや落ちますが、扱いは簡単。釣具店の切り身は割高なので、スーパーで安いサンマ・サバを買って自分で切るのも手です。
イカの切り身
匂いは控えめですが身持ちがよく、切り方を工夫するとワームのようにも見せられます。穴釣りのカサゴをはじめ、ウナギやアナゴ狙いでも使われます。「これ一つで青物まで何でも釣れる万能エサ」と過度に期待しすぎず、身持ちのよいサブのエサとして持っておくと便利、という位置づけが現実的です。
貝類(冷凍アサリ)|カワハギの定番、ただしフグに注意
冷凍アサリはカワハギ釣りの定番エサで、餌持ちがよいのが特長です。ただしフグも大好物で、フグの多い場所では外道でフグばかり釣れてしまうこともあります。
【安全】フグが釣れたら|素人調理は絶対にしない・その場でリリース
フグは食品衛生法上、資格を持たない人が調理・喫食・他人へ譲渡してはいけません。毒(テトロドトキシン)は加熱や塩もみでは消えず、素人判断はそのまま命に関わります。釣れてしまった場合は持ち帰らず、その場でリリースしてください。
さらにフグは歯が鋭く、板状の歯で釣り糸を簡単に噛み切り、指を挟まれると大ケガをします。ハリを外すときは手で口に触れず、必ずプライヤー(ペンチ)を使って慎重に行いましょう。なお、アサリなどの貝を自分で採る(潮干狩り)場合も、前述の共同漁業権の対象になっていることが多いので注意が必要です。
アミエビ|サビキ釣りのコマセ(撒き餌)

小さなエビ状のプランクトンで、サビキ釣りのコマセ(撒き餌)としてアジ・サバ・イワシを寄せるのに使います。匂い付けされた商品もあり、集魚力は商品によって差が出ます。冷凍ブロック・常温チューブなど形態もさまざまです。
なお、撒き餌は都道府県によって使用量の上限や禁止区域が定められている場合があります。使い過ぎず必要最小限にとどめ、残ったコマセやゴミは必ず持ち帰りましょう。これは釣り場を守り、釣り禁止を増やさないためにも大切なマナーです。
小魚(泳がせ・生き餌)|フィッシュイーターを狙う

小魚をエサにすると、他の魚を食べるフィッシュイーター——シーバス・ヒラメ・青物・カサゴなどを狙えます。その場で釣った小アジなどを使う「生き餌(泳がせ)」と、キビナゴのような「死に餌」があり、シーバスなどを狙うなら勝手に動いてアピールしてくれる生き餌が有利です。自分でアクションを付ける必要がないので、じつは初心者にも向いた釣り方です。
ただし、エサに使う小魚でもサイズ制限や禁漁のある魚種は使わないのが原則。ルール対象の幼魚が釣れたら無理に使わずリリースしましょう。また、カニやエビ・小魚は底を狙うことが多く根掛かりしやすいので、仕掛けのロストにも気をつけてください。
海釣りエサ選び 早見表
| エサ | 主な対象魚 | ひとことメモ |
| アオイソメ | キス・ハゼ・カサゴ・メバル・カレイ | 万能・安い。迷ったらこれ |
| 石ゴカイ(ジャリメ) | キス・ハゼ | 細く食い込み抜群 |
| 本虫(マムシ) | カレイ・アイナメ・チヌ | 太く匂い強い高級エサ |
| オキアミ | メジナ・チヌ・マダイ・アジ | ウキ釣り万能。虫が苦手でも |
| カニ・エビ | チヌ・スズキ | 買うのが基本 |
| 切り身(サンマ・イカ) | カサゴ・ウナギ・アナゴ | 虫が苦手な人向き |
| 冷凍アサリ | カワハギ | フグに注意 |
| アミエビ | アジ・サバ・イワシ | サビキのコマセ |
| 小魚 | シーバス・ヒラメ・青物 | 泳がせ・生き餌 |
まとめ|迷ったらアオイソメ、そこから狙いに合わせて
海釣りのエサは種類が多くて迷いますが、選び方はシンプルです。まずはアオイソメを1パック。虫が苦手ならオキアミか切り身。特定の魚を狙うなら早見表で対象魚に合ったエサを選べば失敗しません。
そして忘れてはいけないのが、エサは「買う」のが基本だということ。現地採取には漁業のルールという壁があり、テトラでの行動は命に関わります。安全な足場で、地元のルールを守って、まずは1匹を釣り上げる楽しさを味わってください。
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