「冬は寒いから釣れない」と思っている方は多いと思います。実際、私が冬に静岡の堤防へ行くと、夏場が嘘のように人がいません。でも、それは魚がいないからではなく、単に釣り人が来ないからです。
冬の海で初心者が最も確実に釣果を出せるのが「穴釣り」です。短い竿とブラクリ仕掛けひとつあれば始められ、カサゴなどの根魚が足元で釣れます。ただし条件がひとつ——テトラポッド(消波ブロック)には絶対に乗らないこと。この記事では、テトラに乗らずに穴釣りを成立させる方法を中心に解説します。

冬こそ穴釣りが有利な理由
穴釣りで狙うカサゴやムラソイなどの根魚は、岩やコンクリートの隙間を住処にしていて、一年中そこにいます。季節による大きな移動をしないのが特徴です。
では、なぜ冬が有利なのか。理由はベラなどの外道が減るからです。水温が高い時期は、仕掛けを落とすとエサ取りが先に食ってしまい、根魚の口まで届かないことが頻繁に起こります。水温が下がるとエサ取りが浅場から抜け、本命だけが残る。これが「冬は釣れない」の正反対が起きる理由です。
しかも寒さに備えて脂がのった個体が多く、味も冬が一番いい時期になります。
【最重要】テトラポッドには乗らない
穴釣りを紹介する情報の多くが「テトラポッドの隙間を狙う」と当たり前のように書いています。ですが消波ブロックの上は、釣り場の中でもとりわけ事故が多い場所です。
- 表面が傾斜していて平らな足場がなく、海藻や潮で濡れると極端に滑る
- ブロック同士の隙間に落ちると体が挟まり、自力で這い上がることはほぼ不可能
- 竿やタモを持ったままだと身動きが取れず、発見が遅れる
- 落ちる過程でコンクリートに体を打ちつけ、意識を失うケースもある
海上保安庁の統計では、海中転落が起きやすい場所として防波堤・磯場・岸壁と並んで消波ブロックが挙げられています。そして釣り中に海へ転落した人の生存率は、ライフジャケットを着けていた場合が約7割、着けていなかった場合は4割台にとどまると報告されています。
冬はここに低体温症が加わります。水温10度前後の海に落ちれば、数分から十数分で手足が動かなくなり、泳げる人でも自力で戻れなくなります。夏なら助かった事故が、冬は助からない。それが冬の海です。
私は、テトラの上に乗って釣ることを一切おすすめしません。20年釣りをしてきて、その判断で失ったものは何もありませんでした。

テトラに乗らずに穴釣りをする場所
では穴釣りができないかというと、まったくそんなことはありません。根魚は「隙間」があればどこにでもいます。
| 狙う場所 | ポイント |
| 堤防の際(きわ) | 基礎の捨て石が入っている足元。壁に沿って落とすだけ |
| ケーソンの継ぎ目 | 堤防のブロックのつなぎ目にできた縦の溝 |
| 岸壁のえぐれ | コンクリートが欠けている箇所は格好の住処になる |
| 係船ブロック・スロープの隅 | 構造物の陰。人が狙わないぶん魚が残っている |
| テトラの「外側の際」 | ブロックに乗らず、堤防の上から手前の隙間へ落とす |
特に見落とされがちなのが堤防の際です。多くの人が沖に投げている足元に、カサゴがびっしり付いていることは珍しくありません。柵のある釣り公園でも、際に落とせるなら穴釣りは成立します。
穴釣りで釣れる魚
- カサゴ……穴釣りの本命。煮付け・唐揚げ・味噌汁と何にしてもおいしい
- ムラソイ・クロソイ……カサゴと同じ場所に混じる
- アイナメ……秋から春。根魚の中では大型
- メバル……夜のほうが釣れる。浮いていることも多い
注意が必要なのがウツボです。唐揚げにすると絶品という話は本当ですが、歯が非常に鋭く、噛まれると深い傷になります。体をくねらせて暴れるので、ハリを外そうとするのは危険です。慣れていないうちは、ハリスを切って海に戻すのが賢明です。
タックルは「短い竿」が正解
穴釣りで最も大事なのは竿の短さです。足元の穴に仕掛けをまっすぐ落とすので、長い竿は完全に邪魔になります。
- ロッド……穴釣り専用の1メートル前後。1.5メートルを超えると扱いにくい
- リール……小型のベイトリールか両軸リール。落とす・巻くの操作が速い
- ライン……フロロカーボンの3〜5号。根ズレに強く、掛けた魚を穴から一気に引き剥がせる
根魚はエサを食べた瞬間に隙間の奥へ潜ろうとします。細い糸だとその一瞬で擦れて切られるので、「太すぎるかな」と思うくらいでちょうどいいです。
仕掛けはブラクリひとつ

仕掛けはとてもシンプルで、ブラクリという穴釣り専用のオモリ付きバリを道糸に結ぶだけです。号数は2〜6号を数個持っていけば足ります。
根掛かりで確実に失うので、予備は多めに。私はいつも1回の釣行で5〜6個は消耗するつもりで持っていきます。
エサ——虫が苦手でも大丈夫
定番はアオイソメですが、虫が苦手な方も多いはずです。実は根魚は匂いに強く反応するので、虫エサ以外でも十分釣れます。
- サバ・サンマの切り身……匂いが強く、身が丈夫でエサ持ちがいい
- キビナゴ……そのまま1匹掛け。スーパーでも手に入る
- パワーイソメなどの人工エサ……常温保存でき、余っても捨てずに済む
釣り方は「落として、少し上げて、待つ」
手順はこれだけです。
- ① 穴や際に仕掛けを落とし、着底させる
- ② そこから50センチほど巻き上げる(リール半周〜3/4周が目安)
- ③ 10秒ほど待つ。反応がなければ回収して次の穴へ
コツは粘らないことです。根魚はいれば早い段階で食ってきます。10秒待って反応がなければその穴は空振り。テンポよく穴を替えていくほど数が伸びます。
そしてアタリがあったら即座に巻く。ためらうと奥に潜られ、仕掛けごと切られます。この一点だけは、慣れるまで意識して練習してみてください。
【要確認】採ってはいけない生き物がいる
穴釣りをしていると、岩の隙間にサザエやタコを見つけることがあります。ここは絶対に手を出さないでください。
静岡県の沿岸はほぼ全域に共同漁業権が設定されていて、いせえび・あわび・さざえ・たこ・なまこなどが漁業権の対象種になっています。沼津・富士市の地先も対象です。漁業権者以外がこれらを採ると漁業権侵害として罰せられることがあります。
さらにあわび・なまこ・うなぎ稚魚は「特定水産動植物」に指定されており、漁業法第132条により採捕そのものが禁止されています。これは非常に重い罰則が科される規定です。
対象種は地域ごとに異なるので、釣行前に静岡県「海面における遊漁のルールについて」で最新の一覧を確認してください。他県の場合も、各都道府県の水産担当部署が同様の情報を公開しています。
持ち帰るのは食べる分だけ
穴釣りは、条件が合えば数が釣れる釣りです。だからこそ気をつけたいことがあります。
カサゴやメバルは成長が非常に遅い魚です。20センチになるまでに何年もかかります。静岡県の規則にこれらの魚の法的なサイズ制限はありませんが、小さい個体を持ち帰り続ければ、その釣り場からは確実に魚が減っていきます。
手のひらに満たないサイズはそっと戻す。持ち帰るのは食べる分だけ。それだけで、来年も再来年も同じ場所で釣りができます。
冬の装備と安全

- ライフジャケットは常時着用。冬は特に、落ちてからでは間に合わない
- 単独釣行は避ける。冬の堤防は人が少なく、発見が遅れる
- 日没が早い。冬は16時台には暗くなる。撤収時間を先に決めておく
- 防寒は手先が最重要。指先の出る手袋があると仕掛けの結び直しが楽
- 濡れた堤防は凍ることがある。早朝は足元に注意
まとめ|冬の釣り場は空いている
冬の穴釣りは、短い竿・ブラクリ・切り身エサという最小限の装備で成立し、しかも人の少ない釣り場で楽しめます。エサ取りが減るぶん本命に届きやすく、味も一年で一番いい時期です。
ただし、テトラポッドには乗らない。ライフジャケットを着ける。この2つだけは徹底してください。堤防の際やケーソンの継ぎ目でも、根魚は十分すぎるほど釣れます。安全な足場から、冬だけの静かな釣り場を楽しんでみてください。
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